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たった一つの出来事
それだけで、世界が変わってしまうことがある
信じていたものが、音もなく崩れたとき、
何をよりどころにすればいいのか、
わからなくなる
「そんなの、どこにでもあることだ」
人は言うだろう
「一つの出来事で、すべてを決めつけるのはよくない」と
―たしかに、そのとおりだ
正しい意見だと思う
けれど、
あなたの心を傷つけたのは、
まさにその“どこにでもあること”だった
その“たった一つ”の出来事に
あなたは理不尽に打ちのめされた
この気持ちを誰に、どんなにぶつけても消えはしない
この世に神や創造主が存在するのだとしたら、
見ておられたのだろうか
あなたが信じたものの正体が
あなたの背中に、沈黙の刃を立てるのを
あなたは赦したいと願っている
赦さなければ、苦しさが終わらないことも知っている
でも、赦せない
その傷はまだ、血の気を持って疼いている
それでも―
祈りのほうへ向かっていたい
赦せぬまま、信じることができぬまま、
それでも祈るということだけを
手放さずに、生きていたい
正しさよりも、理屈よりも、
ただ、
あなたの痛みに寄り添ってくださる
ひとつのまなざしを
どこかで信じている
それが、希望と呼べなくても
あなたはきっと今日も、
この名もなき祈りの道を
静かに歩いていくだろう